SINCE/Apr.16.2010  LAST UPDATE/Jul.5.2010

3D映像と
視力の関連情報を
J-EYE風に
お伝えします!


◆はじめに
 今話題の3Dテレビや3D映画など、これから3D技術が生活の中に深く入ってくることと思われます。このページを立ち上げた直後に業界のガイドラインが発表されましたが、3Dをより良く見えるための視力と関係する重要な部分の詳細が必要かと思われますので、メガネ業界に携わる者としてここに独自の取材に基づいて特集を組みました。今回特にお話をわかりやすくするために当社独自でイラスト画像を製作して表示しています。

●3D(立体視)の原理

 立体視の最も古典的なものに<図-1>のような「赤緑フィルター」を利用したものがあります。2色で印刷された文字や写真をこのメガネで見ると浮かんで見えるので、子供の頃に見た人も多いかと思われます。
 <図1>にある「あ」の左側と右側を比べると2色のアウトラインのズレの位置が異なるのがおわかりでしょう。つまり赤緑フィルターを通してこの2つの文字を見るとズレの大きいほうが小さいほうよりも手前に見ることが出来ます。
 ではなぜこのような2色のフィルターを通してみると立体に見えるかについてお話しましょう。


 <図-2>のように両眼で2色の物体を見るとき、<図-1>の文字のように左右にずれた文字が黒っぽい文字となって周囲よりも@のように手前に浮かんで見る事が出来ます。つまり右目の赤フィルターでは赤い文字は見えずに緑色の文字だけが見えます。ただし緑の文字は色が吸収されて黒っぽく見えます。左目の緑のフィルターの場合も同じように赤い文字だけが黒っぽく見えます。両者の視線方向の交差したズレを頭の中では「手前にある」として立体的に認識することが出来るのです。この「ズレ」のことを「視差」と呼びます。


 視差を大きくすると<図-3>Aのようにさらに手前に見る事が出来ます。立体画像の重要な要素は背景にあります。つまり背景がプレーンな状態よりも何か視差の起きない画像や文字が同時に描かれている<図-4>と、頭の中で視差の大きい物体が手前に認識しやすくなるのです。また視差を利用しているので対象物体から適当に近くなければなりません。もし視差のある画像を遠くに置いてしまうと視差が小さくなり、立体として認識しづらくなるからです。
 これは3Dテレビや3Dパソコンでも同じことが言えそうです。つまり遠くに離す場合は画像を大きくする必要があるということです。ただし3Dテレビの場合は画面から近すぎると視差のある動画を見るので疲れやすくなりそうですので近視の方で遠方が見づらい方はご注意ください。メーカーから公表される機種別の最適範囲で視聴されると良いでしょう。


●アクティブ3Dメガネのメカニズム


 高画質3D映像の方式として採用されているフレームシーケンシャル方式では液晶シャッターを使用しています。この場合の視差を発生させるメカニズムは次のような構造になります。(図4-B)で示しているように右目の映像と(図4-C)で示した左目の映像のわずかな位置のずれが視差となるのです。



 この操作を片眼毎秒60コマ(両眼120コマ)で交互に画像を入れ替えて表示させ、液晶シャッターの開閉速度を同期させて使用するものです。実際のコマ速度を数十分の一に落としてシミュレーションしたものが下の画像です。
 人間の目が感じるフリッカーは平均秒間40コマくらいですが、60コマ以上に高速に点滅させるとフリッカーはほとんど感じません。そこで視差のある画像が交互に出現すると立体に感じることができます。



(Copyright 2010. JIMBO-CORP)

 3Dメガネの正面からの画像のイメージは下の画像のようになります。画面に写されている2つの星と6角形の図形の位置と動きに注目してください。


(Copyright 2010. JIMBO-CORP)

 中央の画面に描かれている大きい星と六角形が左右に動いているのがお分かりでしょう。注意深く見ると大きい星と六角形の移動量が異なることがお分かりかと思います。この移動量がすなわち「視差量」であり、視差が大きいものは見かけ上手前に見えるのです。


●3D(立体視)の問題点


 通常の立体視の説明ならばここまでですが、現実的な立体視のよくある状態を眼鏡技術者の立場から解説いたします。


[1] 左右の視力が異なる場合、3D→2Dになることもある



 いわゆる3D関連機器はあくまでも両眼視力や調節力が等しい理論モデルをベースにした設計ですが、現実には左右の視力が異なる人のほうが視力の等しい人よりも圧倒的に多いということです。つまり左右の視力が異なると<図-5>のように片眼のみのイメージしか捉えられないので立体視に必要な視差が起こらないことを意味します。完全に片眼がボケていない場合でも、対象物体の輝度やコントラスト、色の鮮明度によっては立体視しづらくなることも十分考えられます。このような場合は通常のメガネやコンタクトを使用して3D用メガネを併用するようになります。ただし一般コンタクトレンズでは乱視が矯正されずに残留している場合も多く、3D用メガネを掛けると周囲が減光されて瞳孔が拡大することから乱視の影響や残存収差の影響で立体視しづらい可能性もあります。もしそのような場合は無理せず乱視を矯正したメガネやコンタクトを使用をされると良いでしょう。
 実はメガネ業界の、特に認定眼鏡技術者の在籍しているメガネ店では古くからこの赤緑フィルターや偏光フィルターを利用した両眼立体視検査というものを実施しています。「3Dテレビを買ったけれど立体番組が2Dにしか見えない」という消費者の方は一度「両眼立体視検査」をされることをおすすめします。


[2] 裸眼で3D用メガネを装着すると画面が見づらくなる場合は視力補正が必要


@ 3D用メガネは度無しのサングラス状態
 通常3Dテレビや3D映画を見る場合には上述の赤緑フィルターではなく偏光フィルターを使用します。偏光フィルターの位相を鉛直方向に配置することで視差のある、しかもフルカラーの画像を見ることが出来るからです。しかし偏光フィルターには避けて通れないハードルがあるので各メーカーも創意工夫で解決しようとしています。
 偏光フィルターは必ず光の透過率が減少します。その状態では透過光量が減少して瞳孔が散瞳しやすくなるために眼球自身の収差の増大や焦点深度が浅くなるなど、一定水準以下の視力の人が使用する場合、裸眼では画面が見づらくなることがあります。(図-6)の裸眼の場合と遮光フィルター装着時のそれぞれにおける眼球内の瞳孔径と視認イメージの変化にご注目ください。

(Copyright 2010. JIMBO-CORP)

 さらにその環境下では左右の瞳孔径が等しく散瞳するとは限らない(下サンプル画像)ので明るいところでは両眼ともに同じ見え方なのに片眼の見え方だけが若干低下することもあります。
 個人差もありますが、度付のサングラスを購入した場合に、無色レンズのメガネと同じ度数で作って遠くが見づらいという経験をされた人もあるでしょう。3Dメガネは度無しのサングラス状態なので近視や遠視、乱視で通常メガネを掛けている人は必ずそれらを併用して見る必要があります。


A 以前よりも明るくなったアクティブ3Dメガネを体験
 筆者自身、実際にどのような見え方になるか発売されたばかりの最新3Dテレビ(プラズマ画面)を体験してきました。偶然にも家電の量販店には明るい場所とやや暗い場所の2箇所に設置されていましたので両者の違いも調べました。
 まず感じたことは最新のアクティブ3Dメガネの光透過率が向上しており、かつての液晶シャッターを使用した3Dメガネよりも明るく見やすくなっているようです。やや照明を落とした場所でも通常のメガネ(両眼視力1.0用)を併用して見れば全く問題なく立体画像が見えます。むしろ照明の強い場所では画面の表面に照明光が反射して白っぽくなっててしまい、コントラストが下がって見づらく感じました。今後販売が予定される3D液晶画面との違いも調べてみたいところです。偏光フィルターの減光作用があることも事実ですが、最新の3D用メガネにおいては単に景色のように反射光を見る場合と、40インチテレビのような大きな発光体を見る場合とでは必ずしも同じ状態でないことがわかりました。
 また筆者は常時メガネを装用しておりますが、やはりメガネ非装用での3D映像のコントラストは装用時と異なることも確認できました。このへんは年齢など個人差の影響が大きいところでもあり、3Dテレビをより見やすくするための画面のキャリブレーションや視聴環境の模索、さらに視力補正の必要性を試されると良いと思われます。
 今後も新しい3D方式のテレビが出ましたら体験情報をここでご報告する予定です...


[3] 人により固視ズレがある、或いは固視しづらいと
3Dメガネを掛けて気分が悪くなる場合がある
 

 両眼が固定された1点を注視しようと意識しなくても安定して見えればよいのですが、場合によってそうでないこともあります。斜視・斜位といった眼位の問題だけでなく、「輻輳(ふくそう)」といって両眼の視線方向を眼前の1点に集中できる機能の弱い場合なども立体視に必要な視差が出にくいこともあります。

(Copyright 2010. JIMBO-CORP)

 潜伏性や疲労により機能が若干落ちる場合もあるので、3Dメガネを掛けて気分が悪くなる場合や疲れが出やすい場合は連続して見続けないことです。これは仮にパララックス・バリア方式やレンチキュラー方式のような3D用メガネを必要としない方式の3D表示画面を見た場合にも当てはまります。これ以外の予想される問題点についてはこれから続編で順次述べたいと思います。


●3Dメガネの種類


[パッシブタイプ用メガネ] *1
 因みに偏光方式3Dテレビで使用されるメガネは液晶シャッター非搭載の偏光フィルターを使用します。ただし一般のメガネ店で販売しているような直線偏光のメガネではなく円偏光フィルターが使用されています。円偏光にしないと横になって画面を見たり頭を斜めにして見たときに立体に見えなくなるからです。円偏光フィルターとは左右±45゜の遅相軸を持つ1/4位相差フィルムと直線偏光フィルムを張り合わせたものです。
 現在メガネ業界では円偏光フィルター仕様の度付レンズは販売されていないので、視力補正の必要な方は通常のメガネの上に円偏光フィルターを取り付ける必要があります。


[アクティブタイプ(液晶シャッター)用メガネ] *2
 フレームシーケンシャル方式の3Dテレビを見るアクティブシャッター内蔵の3D用メガネでは左右の液晶シャッターを交互点滅のようにフリップフロップさせて秒間左右120コマ表示させています。これを電波や赤外線リンクで開閉信号を同期させた3D用メガネを使用することで立体映像が見られます。近年の動画性能を高めた高画質・高速液晶表示技術とバックライトのLED化によるアクティブバックライト技術の賜物でしょう。またフレームシーケンシャル方式を採用したプラズマパネル映像の高輝度化とスイッチング特性を生かした映像も見逃せません。


●まとめ


 景気がしばらく後退しておりましたが、3Dテレビはエンターテイメント系のみならず学術分野や旅行、さらにはショッピングや料理番組など実現されれば景気刺激に直結される可能性も十分秘めています。3Dが推進されることの経済効果に期待するとともに3Dライフを楽しく過ごすには3Dと視力に対する正しい理解が必要かと思われます。
 当店では通常の両眼立体視検査をはじめ、今後販売される3Dパソコンに対応した近用両眼立体視検査も実施しております。そのほか一般のパソコン用メガネについても自店で特殊なソフトウェア(PasoMega システム)を開発してコンサルティングしておりますので、ぜひともお気軽にご相談ください。




 今後このサイトもさらに情報を集めて内容を拡大したいと考えております。


参考文献
*1 ビクター社のサイト  *2 パナソニック社の3Dテレビ・パンフレット




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